みなさんこんにちは!
今回は寺地はるなさんの『わたしたちに翼はいらない』のあらすじと感想を紹介します!]
普段の寺地はるなさんはどこかホッとするような優しい雰囲気の作品が多い印象ですが、今作はかなりドロドロとしたサスペンスになっています
地方都市に生まれ、その地で大人になった3人の男女が、あるきっかけで出会い絡み合っていきます。
1人は小さい頃の辛い思い出を共有できる仲間として、1人は小さい頃のいじめの復讐相手として、様々な心情を持ちながら関わり合っていきます。
様々な大人の闇が描かれていく作品になっています。
それではあらすじから紹介していきます。
今回紹介する作品
『わたしたちに翼はいらない』あらすじ
まずは物語の中身を詳しく紹介していきます
あらすじ
地方都市に生まれ、大人になるまでその地で育った3人の男女
独身で1人を好む園田
シングルマザーの朱音
専業主婦の莉子
それぞれ3人はいじめや親による偏った教育により、心に小さな傷を負っていた
そんな3人が少しずつ関わり合い、過去の傷に囚われながら闇に落ちてくーー
登場人物
物語は3人の登場人物を中心に展開されていきます。
この3人は小さい頃の育てられ方や、いじめによって心に傷を負っており、大輝への復讐という軸で繋がっていきます。
それぞれの思惑
それぞれ3人は心に闇を抱えています
園田は大輝からのいじめにより恨みを持っており、社会人になってから再会した時の大輝に上から目線の言葉遣いに殺すことを決心します。
そして莉子は、学生の頃のクラスの中心人物だった大輝と学生時代から付き合いそのまま結婚。
クラスの中心だった大輝を結婚できたことに当時は優越感のようなものを持っていたのですが、大輝の普段の振る舞いに莉子のことを下に見ている節があり、そのことにプライドを傷つけらてきた。
離婚も考えているが、離婚するくらいなら死んで欲しいと思っている
そんな園田と莉子もあるきっかけで再会
園田はすぐに莉子のことを思い出しますが、莉子は全く覚えていない様子。
そのことを知った園田は大輝を殺すために莉子に少しづつ接触していきます
そんな園田を朱音もちょっとしたことで出会い、大輝の復讐のことを相談することになります。
朱音は復讐に大きな興味はなく、過去に同じようにいじめられていた者の復讐を見てみたいという気持ちで相談に乗るようになります
物語の見どころ
こんな3人が大輝への復讐という軸で関わり合ってきます。
今作の見どころの一つは園田の復讐ですが、それぞれ3人の細かな心理描写も大きな見どころになっています
莉子の小さな頃から築き上げてきたプライド
朱音の家族に対する考え方
そしてクライマックスの3人に待っている現実
ドロドロのサスペンスになっていますが興味のある方はぜひ実際に読んでみてください!
『わたしたちに翼はいらない』感想
ここからは今作を実際に読んだ感想を紹介します
小さい頃の傷が産んだ悲劇
今作でメインとなる3人の人物はみんな小さい頃に何かしら心に傷を負っています。
・園田は中学時代に中原大輝にいじめを受けていて不登校にまで追い込まれていた。
・中原大輝の妻である莉子は、小さい頃から可愛いを武器にして育ち、母親からも勉強などせずに可愛さを磨くことだけを考えろと言われてきた。
・佐々木朱音も小さい頃いじめを受けており、その頃の学年主任に1人で生きていけるようになれと教えられた。
それぞれが違った形で小さい頃に心に傷を負っており、それが大人になって大胆な行動に移る原動力になっています。
園田は中原大輝を殺そうと決心し、莉子も可愛さだけで生きていた代償として大輝から蔑まれプライドを傷つけられていく。
そして朱音は離婚を決意する。
そんな3人が園田による大輝への復讐をきっかけ繋がり、闇へと落ちていくんです・・・
幼少期の人生の影響力が負の方面に色濃く描かれた作品だと思いました。
そして、対比するかのようにプロローグとエピローグで小さな女の子の物語が描かれます。
これが、今の子供達にはこんな風に育って欲しくはないという、対比となる物語になっていると思っています。
被害者と加害者の認識の違い
作中の印象に残ったシーンに、園田が大輝を殺そうと決意したきっかけを莉子に話す場面があります。
園田が話した言葉に莉子は『それだけ・・?』と思わず呆れた声で言ってしまうんです。
このシーンが被害者と加害者の認識に違いがわかりやすく描かれていると思います。
悪気があって言ったつもりがなくても、相手にとってはそれが殺したいと思うほどの言葉に受け取られてしまうことになり得るということです。
しかもそれは園田が過去に大輝にいじめられていたという事実があるからこそだと思うので、この被害者と加害者の認識の違いがわかりやすく描かれた印象的なシーンでした。
”言葉は刃物”
何気ない一言が人を傷つけることがあるということですよね・・・
破壊と再生の物語
3人の男女が園田の復讐をきっかけに繋がっていく物語で、かなりドロドロで暗いストーリーになっていますが、エピローグに小さな希望が描かれます。
物語のラストで3人は大輝の大怪我により目を覚まし、次の道へと進んでいきます。
そしてエピローグで莉子と朱音の子供同士が仲良く遊び、そこにいるかんな女の子の心情が描かれます
かんなは人の心の変化に敏感で、自分を殺してまでの相手に合わせて馴染もうとする性格でした。
そんなかんなが莉子と朱音、そして2人の子供同士を見て、これから自分で考えて前向き行動していこうと決意します
ここに、子供の頃気持ちを抑えていたからこそ、園田たちのような闇に落ちてしまった大人にならないように行動しようとする希望が描かれているように感じました。
僕はこのシーンに小さな希望を感じました
印象に残った言葉
作品に散りばめられた寺地さんの印象的な言葉
その中からいくつか紹介していきます
「犀の角のようにただ独り歩め」
『わたしたちに翼はいらない』88ページ
寺地さんの言葉ではないですが、仏教で教えられている言葉です
悩みを生み出す原因が人間関係におるなら、しばらくそんな人間関係と距離を置くことが心の成長に繋がるという教えです
悪いことをしたと思っていないのに「相手が傷ついているから」する謝罪など、意味がない。
『わたしたちに翼はいらない』220ページ
朱音が離婚をし、それにより義母が傷ついたのではないかと思ったシーンで書かれたセリフ
朱音の決心の強さがわかりやすく描かれた言葉だと思っています
まとめ
今回は寺地はるなさんの『わたしたちに翼はいらない』のあらすじと感想を紹介しました!
今までの寺地はるなさんの作風とは少し違うサスペンスになっていますが、寺地さんらしい人の心理描写が見事な作品になっています。
興味のある方は実際に読んでみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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