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住野よる『また、同じ夢を見ていた』あらすじと感想【少女の冒険】

大好きな作家さんの一人である、住野よるさんの作品📕

「君の膵臓を食べたい」で一気に有名になった住野よるさんの二作目の作品で、学生の頃に一度読んだんですが、また読んでみたいなと思って読んでみました。

改めて読んでみると、学生の頃には感じなかったこの作品の良さに気づくことができ、”幸せ”とはなんなのかを考えさせられる素晴らしい作品でした。

著:住野よる
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目次

『また、同じ夢を見ていた』

登場人物

本書の主人公である小柳奈ノ花はとても頭の良い小学生。

「人生とは〜だ」というのが口癖で、頭はいいけれどクラスの子たちを馬鹿に思っていて、学校には友達がいません。

しかも両親は共働きで忙しく、学校から帰ってきても遊んでくれません。

ただ、そんな奈ノ花にも学校の外に素敵な友達がいます。

まずはちぎれた尻尾の黒猫
奈ノ花は「彼女」と読んでいて、人に甘えるのが上手な猫です。
しかも奈ノ花と心が通っているかのように、仲良しな猫です。

次に、綺麗な女性のアバズレさん
アバズレさんはいつも夜遅くまで働いて、奈ノ花が遊びに来る昼過ぎまで寝ています。
春を売る仕事をしていて、奈ノ花が来るといつもおいしいお菓子やアイスで出迎えてくれます。

アバズレさんという名前はアパートの表札に乱暴に書かれた字を見て、奈ノ花が名前と思って読んでいます。
本人もそれでいいと言ってアバズレさんと呼ばれています。

次は、おばあちゃん
おばあちゃんは一人で住んでいて、マドレーヌを焼くのが得意。たくさんの本を知っていて、奈ノ花におすすめの本を教えてくれます。また物語の中でオセロの話があるのですが、その時奈ノ花には『先を見る力』があるといい、大人は過去を見る生き物だといいます。

このセリフがのちに奈ノ花と他の登場人物の正体に関わってきます

そして、最後は南さん
彼女は高校生で、ある日奈ノ花が黒猫とお出かけをしている時に、いつもと違う道を言った先にあった大きな建物の屋上で出逢います。南さんという名前はは本名ではなく、彼女の着る制服のスカートに『南』と刺繍されていたため、奈ノ花が勘違いしたのです。

南さんは小説を書くのが好きで、でもそれを恥ずかしくて誰にも打ち明けられずにいました。

最初は南さんは奈ノ花のことをうざがっていましたが、南さんの書く小説を気に入ってもらったことから少しずつ距離が縮まっていきます。

こんな素敵で少し変わったお友達と過ごしている中、ある学校の授業で『幸せとは何か?』について考える課題を与えられました。この課題に対して奈ノ花はアバズレさんたちに色々教えてもらいながら、自分の中での幸せを見つけていくのです。

物語のメインテーマ

この物語のメインテーマは『幸せとは何か?』ということです。

結論から言うと、物語の中に以下の一文があります。

幸せとは、自分が嬉しく感じたり楽しく感じたり、大切な人を大事にしたり、自分の子を大事にしたり、そういった行動や言葉を、自分の意思で選べることです。

”また、同じ夢を見ていた”296ページ

幸せとは自分の中でこうしたいという事を自分の意思で選べる事なのです。
周りの意見を聞いて参考にしながらも、最終的な選択は自分がする。そういうことが自分の幸せにつながるのです。

本作品のからくり

まずはタイトルにもある『また、同じ夢を見ていた』について。
大人になった奈ノ花、南さん、アバズレさん、おばあちゃんがこの言葉を口にしていますが、作品を最後まで読んだ方まら気づいていると思いますが、

つまり、この四人は同一人物なのです。

もちろん最初から登場する小学生の奈ノ花も同一人物。

大人になった奈ノ花の”南さんにそっくりだった顔から、段々アバズレさんの顔に似てきています。”というセリフからもわかると思います。

奈ノ花以外の人物は奈ノ花が違う選択をした場合の未来の自分で、彼女たちは夢の中で小学生の自分=奈ノ花のことを見ていたのです。

南さんお母さんと仲直りできなかった奈ノ花の未来の姿
アバズレさん同級生から無視され、嫌になり周りとの関係性を全て断ち切ってしまった奈ノ花の未来の姿
おばあちゃん意地を張り続け、桐生くんに謝ることができず、隣にいることができなかった奈ノ花の未来の姿
なのです。

それぞれのタイミングで、三人はこうすべきだとアドバイスをくれ、まだ小学生である奈ノ花が自分のように間違った選択をして、不幸せになることを防いでくれていたのです。

まとめ

この作品は『幸せ』とは何かについて考えさせられる、素晴らしい作品でした。
この作品を読んで自分が考える幸せとはなんなのか。そしてその幸せにきちんと近づけているのか。そのことを考えさせられました。

作品のテーマ自体もすごくいいのですが、タイトルの意味をしっかり回収する緻密に組み立てられた物語の構成が読んで良かったと心から思える良作でした。

興味のある方はぜひ読んでみてください。

著:住野よる
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