今回は怪談作家の梨さんの作品
『お前の死因にとびきりの恐怖を』のあらすじと考察を紹介します!
梨さんといえば『かわいそ笑』や『6』という作品が有名で、日常に潜む怪異や民族伝承などを取り入れた怪談が特徴の作家です
また、作品のリアリティを増幅させるために、登場人物のSNSアカウントを作ったり、謎のアカウントに繋がるQRコードなども作品に盛り込まれています。
今回紹介する『お前の死因にとびきりの恐怖を』は、これまでの梨さんの作品の中でも物語調が強く、登場人物により引き込まれる作品になっています
梨さんの作品が好きな方や、梨さんは初めての方にもオススメな作品です!
- リアルな日常怪談を楽しみたい方
- 怪談小説が気になるけど読んだことがない方
- 梨さんの作品が好きな方
あらすじ
まずは、今作のあらすじと作品の内容を紹介していきます
あらすじ
文芸部の片隅で見つかったUSBメモリ。
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781623375より引用
それは、ひとりの男子学生の「死」に関する情報を集めた不気味なものだった。
その男子学生の死因は「自殺」。
ただ、発見現場には数々の不可解なものが残されていた。
睡眠薬の錠剤とともに床に散乱している、びりびりに破かれたおふだらしき何か。口内に絡みついた彼自身の髪の毛。それらの痕跡は、まるで恐怖に苦しんだ結果、超自然的な儀式に手を染めたかのようで───
文芸部で発見されたUSBメモリ、新聞部の校内記事、合唱部の変遷レポート…etc.
筆者がある高校から収集した、一見無関係な情報から浮き上がる”真実”とは。
ある高校で見つかった謎のUSB
物語の始まりは、ある高校の文芸部の部室で見つかった謎のUSB
そこには見知らぬ一人の男子生徒の「死」に関する情報がまとめられていました。
作中にQRコードが貼られていて、このUSBに入っていた情報を実際に見ることができます
このUSB特に怖いことは書いてないのに、すごい不気味なんです・・
そして、その男子生徒の死因は「自殺」
しかも、その男子生徒は校内で自殺しており、その遺体は何かの儀式をしていたかのように、周りにはビリビリに破れたお札が散らばり、口には男子生徒の髪の毛が絡み付いていたのです。
不気味な死体の謎
そして、この残されたUSBの正体を知るための筆者は調査を開始します。
筆者の調査
筆者はこのUSBに残されたデータの正体を暴くべく、高校の生徒たちに聞き込み調査をしていきます。
その中で生徒から様々な恐怖の噂を聞くことになるのです。
新聞部に語られているのは、「きれいな本」と呼ばれる誰が書いたのかわからない文芸誌
合唱部に語られているのは「基地」と呼ばれる敷地内になる古びた倉庫
特に、「基地」では多くの怪奇現象が目撃され、自殺した男子生徒はこの「基地」で亡くなっていたのです。
終盤に語られる生徒の自殺の真相
筆者の調査で進むこの作品の終盤では、実際に自殺した男子生徒の真相が語られます。
自殺した一人の男子生徒
この男子生徒のそばには、一緒に怪異に立ち向かった女性生徒の存在があったのです。
ラスト2章はこの高校で起きる様々な怪奇現象に立ち向かった二人の生徒の物語です。
ラストを知った時は、恐怖だけではなく胸が苦しくなるような青春を味わうことができると思います。
ぜひ、実際に読んでみてください!
すごく読みやすい怪談小説になっていますよ!
考察
ここからは『お前の死因にとびきりの恐怖を』を読んだ独自の考察を紹介していきます
ラストの理生の心情
悠真が死んだ後、悠真の友達であろう男子生徒から理生が詰められるシーンがあります。
その時に理生が感情をあらわにして、男子生徒に言い返すのが印象的でした。
この時、死にものぐるいで怪異の調査をしていた悠真の姿を知っている理生は悔しかったんだと思います
あれだけ苦しんで必死に怪異に立ち向かった悠真が、あっけなく情けない姿で死んでしまった
死んだことはもちろん悲しいけれど、それ以上にその死に様に悲しさを覚えたんだと思います。
このシーンに僕は今までの梨さんの作品にはない、胸が苦しくなるような感情を感じました
ただ怖いだけの怪談小説じゃないのが、この作品の魅力です!
カバー裏に隠された第8章
実は作品のカバー裏に作品の続きを思われる第8章が存在します
そのタイトルは「REMENBER」
そして、内容は
「2020年7月に遺書もなく死んでしまったRさんへ だからあなたの自殺は決して間違っていません」
この内容から理生の最終的に怪異に犯されて自殺してしまったことがわかります
そして、この文章は筆者が理生に送る精一杯の追悼なんじゃないかと思います。
理生は最後、恐怖に押しつぶされそうになりながらも怪異に立ち向かっていきます。
そんな理生の姿を高校での調査を通して知った筆者は、「お前の死因にとびきりの恐怖を」という作品として残したんだと思います。
感想
この怪談小説の怖いところは、怪異の正体がはっきりせず、形をなしていないことです
皆さんも、夜道を歩いていたり、夜中に学校や建物の廊下を歩いていると”何かがいるかも”という感覚を味わうことはありませんか?
今作はこの”何かがいるかも”という恐怖が、悠真と理生を蝕んで、高校中に蔓延しているのです。
はっきりしないからこそ、自分の周りにも”いるかもしれない”という感覚が広がっていくので、ゾクゾクがすごかったです。
これまでの梨さんの作品の中でも、物語調が強くてすごく読みやすいと感じました!
怪談小説未経験の人にもオススメできる作品です!
みんなの感想
SNSに投稿されている今作の感想をいくつか紹介します
まとめ
今回は梨さんの『お前の死因にとびきりの恐怖を』のあらすじと考察を紹介しました!
これまでの梨さんの作品の中では物語調が強く、怪談小説としてはマイルドな仕上がりになっています。
様々な恐怖の物語を生み出してきた作者だからこそ書けた、恐怖と青春の物語です
興味がある方はぜひ読んでみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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