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塩田武士『存在のすべてを』あらすじとレビュー、感想を紹介!

みなさんこんにちは!

今回は塩田武士さんの作品で『存在のすべてを』のあらすじとレビュー、感想を紹介します!

前代未聞の『二児同時誘拐事件』から始まる物語で、誘拐事件から30年後に出た一つの記事をきっかけに、事件の裏に隠されてきた真実を追い求める記者が描かれていきます。

500ページ近い大ボリュームの作品で、とにかく読み応えのある重厚な作品です。

ミステリー要素がありながら、家族の愛や記者の矜持など作者渾身の作品になっています。

本記事はネタバレを含みますのでご注意ください!

今回紹介する作品

著:塩田 武士
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この記事を書いた人
  • 29歳大手メーカー会社員
  • ブログ歴3年目
  • 年間読書数100冊超え
  • KindlePaperWhite、Audible愛好家
一緒に勉強
しましょう!
目次

『存在のすべてを』あらすじ

まずは物語のあらすじから紹介していきます

あらすじ

平成3年、神奈川県で起きた前代未聞の『二児同時誘拐事件』

1人は無事保護できたが、もう1人は行方不明のままだった。

しかし事件から3年後、行方不明の少年は突然自宅に帰ってきた。

少年は行方不明だった3年間の事を一切語る事なく事件は時効を迎えるーー

そして事件から30年後、当時事件を取材していた記者が1人の刑事の死をきっかけに被害少年の”今”を知る

再取材により事件の真相に近づき、記者はある写実画家の存在に行き着くーー

30年間語られることのなかった事件の真相に心打たれる

二児同時誘拐事件

物語の始まりは平成3年に起きた前代未聞の『二児同時誘拐事件』

まずこの事件では1人の少年が塾の帰り道に何者かに誘拐され、その両親に2000万円の身代金を要求してきました。

しかし、犯人からのその後の連絡はほんの数秒のみで、何か違和感のあるのものでした

すると誘拐された翌日

神奈川県の別の場所で少年が誘拐されたと警察に連絡が入るのです
しかも、その際の身代金は1億円

第1の事件はあくまで”囮”で、第2の誘拐事件が本命だったのです

その後、第1の事件で誘拐された少年は無事保護されましたが、第2の事件で誘拐された少年は行方不明のまま3年が経過してしまいます。

そして事件から3年後
第2の事件で誘拐された内藤亮という少年は突然祖父母の自宅に戻ってきたのです

無事に帰ってきた亮は行方不明だった3年間のことを一切口にすることなく事件は時効を迎え、30年が経過しますーー

事件から30年後

事件から30年後
この事件を担当していた刑事・中澤が亡くなったのことをきっかけに物語が展開していきます。

中澤の葬儀に参列した記者の門田
門田は30年前、誘拐事件の取材を担当しており、その頃から刑事である中澤と交流がありました。

葬儀に参列した門田はそこで知り合いの刑事と再会し、誘拐事件の被害者である亮の現在の姿を知ることになります。

亮は名前を如月脩(きさらぎしゅう)と変え、人気写実画家として活躍していたのです。

写実画家とは写実絵画を専門にしていて、 見たままをそのまま忠実に描くことを基本にした絵画作品を発表しています

亮が画家として成功していましたが、亮は基本的に顔を隠しており、どこに住んでいるのかも明らかにしていませんでした。

そのため、亮の現在の姿を知った門田は当時の事件の真相を追究すべく、再取材を行うことにしたのです。

門田の再取材

門田は葬儀で出会った刑事から、亮が画家をしているという情報と当時の誘拐事件の容疑者の親戚に同様の画家がいる事を知ります。

その画家の名前は野本貴彦

門田はこの画家が亮に何かしら関わっているであろうと考え、写実画家に関わる画廊への取材を行います。

その中で取材を行った画廊の責任者や、その画廊の責任者と親交のある人物など様々な人物に取材を行っていきます。

そうしていく中で、亮は当時誘拐された後、野本と一緒に暮らし、全国を転々としていたのではないかという疑惑を持つようになるのです。

二つの視点から進む物語

そして物語は門田の視点だけではなく、もう一つの視点からも進んでいきます

それは亮の高校の同級生である土屋里穂の視点

里穂はかつて百貨店の美術画廊に勤務し、現在は父親の経営する新宿の「わかば画廊」を手伝う女性です

里穂は中学生の頃、偶然外で絵を描いていた亮と出会い、それから里穂にとって亮は特別な人物になっていました。

亮は里穂にとって初恋の人物だったのです・・!

そして里穂も門田と時を同じくして、亮が如月脩という画家をしている事を知り、亮を探す旅に出るのです。

物語の展開

物語は門田と里穂の二つの視点で進んでいきます。

門田は記者として現在の亮の姿を記事に書くため

里穂は初恋の相手を探すため

それぞれは別の理由で亮を探し、そしてラストに2人の運命は交わるのですーーー

物語を詳しく知りたい方はぜひ実際に読んでみてください!

著:塩田 武士
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『存在のすべてを』感想とレビュー

ここからは『存在のすべてを』実際に読んだ感想を紹介していきます。

ネタバレを含みますのでご注意ください

秘密にされていた家族の愛に感動

物語のクライマックスに進むにつれて、亮が野本夫婦と一緒に暮らしていたという事実に辿り着くんですが、野本と亮の回想は本当に感動しました・・・

誘拐され野本の元に連れられた亮

当時、亮は母親から虐待されていて、その姿を見た野本夫婦が子供に対する愛に目覚めるんです。

悪いことをしているという罪悪感を持ちながらも、亮を大事にしたいという気持ちとの板挟みで幸せながらも辛い毎日を過ごしていた野本夫婦

最後の亮とのお別れは本当に泣きました・・・

絵画界のしがらみが強烈!

物語の中で野本貴彦の過去を回想する場面があるのですが、ここで絵画界のしがらみが描かれます。

このしがらみが本当にすごい・・!

絵を描くという仕事をしていながらも、絵を描き続けていくためにはその世界で大御所から可愛がられないといけなかったり、絵画界で上にいくために絵で勝負するのでは多くの金が動くんです

このドロドロとした世界に嫌気がさした野本貴彦は大御所の元を離れるのですが、その後野本の個展が潰されたり、働き口に先回りして退職させたりと本当に強烈な仕打ちをしてきます。

この内容が現実でもあるのかわからないですが、この内容にはすごく驚きました。

描かれるのは事件に影響を受けた「存在のすべて」

今作は『二児同時誘拐事件の真相』というミステリー要素がありながら、クライマックスで描かれるのは事件の真相ではなく、事件によって運命を変えられた人物の姿です。

その描かれた方がこの作品の大きな魅力になっています。

事件により亮は虐待してきた家族から解放され野本夫婦に育てられます。
そして野本夫婦も今までの夫婦での暮らしから大きく環境が変わることになります。
さらにこの家族を支えるために多くの人物が関わっていくます。

事件によって多くの人物の生き方が変わり、そしてその事実が隠されたまま30年を迎えるのです。

この描かれ方に他のミステリーにはない物語の深みを感じましたし、それが今作の魅力になっています。

まとめ

今回は塩田武士さんの「存在のすべてを」のあらすじと感想、レビューを紹介しました!

二児同時誘拐事件の謎を追うというミステリー要素がありながらも、それだけではなく家族の愛や記者の矜持、絵画界のしがらみなど、内容の濃い見どころたっぷりの作品でした。

また写実絵画という現実を絵でそのまま表現する作品の存在を初めて知り、絵画に対する興味も掻き立てられました!

作者のこの作品に対する熱量がすごい伝わって、多くの人に読んで欲しいを思える作品です

興味があればぜひ読んでみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

著:塩田 武士
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