みなさんこんにちは!
今回は湊かなえさんの15周年記念書き下ろし作品『人間標本』のあらすじと感想をネタバレを交えながら紹介していきます。
『告白』や『母性』などこれまでに多数メディア化された作品を多く執筆している湊かなえさん
ミステリージャンルを多く描かれていて、何とも言えない後味の悪さが残りながらも読む手が止まらない魅力がある作品が多いのが特徴です
今作もかなりグロテスクなシーンが多いながらも読む手が止まらず、作品の途中から物語の様相がガラッと変わりとにかく引き込まれる作品でした
期待を裏切らない傑作で、個人的に2023年のベスト5に入るほどの作品です
それでは詳しい内容から紹介していきます!
今回紹介する作品
『人間標本』あらすじ
まずは作品のあらすじから紹介していきます。
あらすじ
小さい頃から蝶が好きだった
種により色彩が変わる美しい羽
人間とは違う色が見える特殊な目
蝶の標本を作っていたある日、画家である父が発した言葉がその後の人生を変える
「人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな」
その衝動は数人の少年たちに向けられたーーー
『人間標本』榊史郎①
物語が榊史郎の手記から始まります。
榊史郎は幼い頃、画家である父の影響で人が住んでいないような山奥に引っ越すことになった。
そんな山奥で初めての蝶を見つけてから史郎の人生は一変する
様々な蝶が住む裏山で史郎は蝶に魅せられ、毎日のように蝶を採集していた。
そんな史郎の姿を見た父は、史郎に「蝶の標本を作ってみないか」と提案する。
父の提案を喜んだ史郎は父と一緒に蝶の標本を作ることになる
そして、その時に発した父の言葉は史郎の人生を大きく左右するーーー
『人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな』
『人間標本』榊史郎②
さらに蝶にハマっていった史郎は蝶の生態を調べ、裏山の花畑を蝶の目から映る色彩で絵にした。
そして、その絵と蝶の標本を同じ額に納め一つの作品にしたのです。
この史郎の渾身の作品はあるきっかけで他の人の手に渡ります。
その人物は父の友人の娘である一之瀬留美
留美は史郎が一生忘れることのない女性になります。
『人間標本』榊史郎③
その後長い年月が経ち、史郎は蝶の専門家になった
その間も留美のことを忘れられず、密かに心に思い続けていたある日
25年後、瑠美から史郎宛に1通の手紙が届く。
留美は画家になっており、史郎の蝶の研究を新聞で見たことで連絡をしてきたのです。
再会した二人はその後もしばらく連絡を取り続け、お互い別の人物と結婚し、子供が生まれます。
さらに月日が流れたある日
史郎の息子宛に留美から留美主催の絵画教室に来ないかという誘いが届く
史郎の息子であるイタルはその時中学2年生で、史郎の父の血を受け継ぐ画家の才能に溢れた少年だったのです。
『人間標本』榊史郎④
絵画教室に集められたのは息子を含め6人の少年
イタルに付き添った史郎は留美と再会し、そこで留美からあるものを見せたいと言われます。
なんとそれは史郎が昔、留美にプレゼントした蝶の標本と花畑の絵が一緒になった作品だったのです。
数十年ぶりにその作品を見た史郎は天啓を受けた心地がします
人間としては、私だけに見えるこの世で最も美しい光景を、永遠のものとなる形に残し、一人でも多くの観衆に知らしめることこそが・・・。
『人間標本』60ページ
神が我に与えし天命ではないか。
その後の史郎の目には絵画教室に集められた少年たちが蝶に見えていたのですーーー
『人間標本』榊史郎⑤
その後史郎は絵画教室に集まられた少年たちを次々を殺害し、人間標本として作品にしていきます。
5人を殺害した史郎はそれだけでは止まらず、何と自分の息子までも殺害し、作品にしてしまいます。
ここまでが作中で史郎が『人間標本』としてまとめた手記です
その後史郎は何とこの手記をネットに公開するのです
SNSでは様々な声があがり、『人間標本』の書籍化まで騒がれている中、実際に殺害された少年たちの死体が見つかり史郎は自ら警察に出頭するのでした。
その後の展開(ネタバレ注意)
ここまでが今作の序章に当たる部分になるかなと思います。
少年たちを殺した経緯や殺害方法まで記した『人間標本』をネットに投稿した史郎
判決は死刑を言い渡されるのですが、その後の史郎の回想がまさかの驚きの連続なんです。
途中までは気分が悪いサイコパスの記録ですが、途中から作品の様相がガラッと変わり、父としての苦悩が描かれます
驚愕のラストが気になる人はぜひ実際に読んでみてください!
期待以上の傑作でした!
『人間標本』ネタバレ感想
ここからは実際の『人間標本』を読んだ感想を紹介していきます
ネタバレを含みますのでご注意ください!
巻頭のイラストが衝撃的
この作品を開いてまず僕が思ったことは、「最初のイラスト何?」です笑
この作品物語が始まる前に数ページのカラーイラストがついてるんです。
人が磔にされていたり、磔にされている人の下半身がなかったり、謎だけどとりあえずグロテスクなイラスト
実はこのイラストは作中に出てくる『人間標本』の作品なんです
つまり実際に殺害されて、標本になった少年たちの写真
これを聞くと、「え・・?」って思いますよね
読めばわかるんですが、文章で描かれる人間標本の作品が実際にイラストになっていて、物語のきみ悪さが一気に増される作りになっているんです・・・
目次がない作品
そして、この作品は目次がありません。
物語は5章構成になっていて場面が切り替わるのですが、それが目次にはなっていません。
つまり、物語全体の流れが最初から読まないとわからないようになってるんです。
この作りのおかげで、「このままどうなるの?」という興味が増されていて、グロテスクではあるけど読む手が止まらない作りになっているんじゃないかなと思いました。
後半から様相がガラッと変わる
物語の序章は榊史郎の手記になっていて、人間標本を作った経緯や、少年たちを殺害した方法などかなりグロテスクなな内容になっています。
しかし、本文を越えたあたりから物語が一変します。
史郎が作ったと思われていた『人間標本』
実は別の人物によって作られていたんです。
史郎はこの『人間標本』を最初に見て、作者が犯した罪を全て被ることを覚悟した上で、自分の作品としてネットに公表し、自首したのです。
そこには史郎の父として愛があったんです・・・
期待を裏切らない傑作
鳥肌もののすごい作品でした!
序盤はグロテスクな表現が多く、読む手が進まないこともあったんですけど、読み進めていくうちに物語の真相に近づいていき、ラストは胸が締め付けられるほどの悲しみと辛さを感じました。
これはグロテスクなことで気分を害したわけではなく、史郎の行動から伝わる息子への愛の気持ちからです。
そしてラスト30ページは息をするのも忘れるほどの衝撃が待っていました。
個人的には2023年ベスト5入るほどの傑作だと思っています。
グロテスクな表現が多いですが、興味がある方は実際に読んでみてください!
まとめ
今回は湊かなえさんの15周年記念作品『人間標本』のあらすじと感想を紹介しました。
前半はサイコパスの殺害記録になっていますが、後半から作品の様相がガラッと変わり、史郎の父としての苦悩が描かれます。
そして、その中で謎とされていた部分が次々を明かされ、ラスト30ページは呼吸を忘れるほどの衝撃です。
期待以上の傑作で、個人的2023年ベスト5入りの作品なので、興味がある方はぜひ読んでみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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