みなさんこんにちは!
年間100冊本を読む読書家のだいちです!
『ゴリラ裁判の日』読んでみたいけど、買う前に内容を知りたいな・・
『ゴリラ裁判の日』がメフィスト賞受賞したらしいけど、どんな賞?
今回はこんな疑問に答えていきます。
今回紹介する『ゴリラ裁判の日』は、作者である須藤古都離さんのデビュー作で、第64回メフィスト賞満場一致の傑作です
言葉を知ったゴリラが夫を殺され、人間と戦うために裁判を起こします。
そして、人間と獣の違いはなんなのか?正義とはなんなのか?人権とはなんなのか?を問う物語です
それではあらすじから紹介していきます。
今回紹介する作品
メフィスト賞とは
今回紹介する作品『ゴリラ裁判の日』は第64回メフィスト賞に選ばれています。
では、メフィスト賞とはどんな賞なのでしょうか。
20年以上の歴史ある賞
メフィスト賞は講談社が発行する文芸雑誌『メフィスト』から生まれた公募文学新人賞のことです
賞の対象となるジャンルは「エンタテインメント作品」という大まかなものしかなく、明確な応募期間も決まられていません。
また、賞金もなく、受賞した作品はそのまま出版されることになるため、その印税が賞金代わりになるとされています。
面白ければなんでもあり!
メフィスト賞の大きな特徴は『面白ければなんでもあり!』ということです。
今までの受賞作品は「理系ミステリ」や「ギャグが多い短編集」など、本当にジャンルに縛られないとにかく面白い作品が選ばれる賞になっています。
好みはありますが、メフィスト賞は面白い作品が多いです!
こんな尖った賞に満場一致で選ばれた『ゴリラ裁判の日』が面白くないわけがないですよね!
それでは詳しく内容を紹介していきます!
『ゴリラ裁判の日』
あらすじ
カメルーンのジャングルで生まれたゴリラのローズは、生まれながらにして高い知能を持っていた。
ローズは人の言葉を理解し、手話を使って会話をすることができた。
そんなローズはアメリカの動物園で暮らすことになった
ローズはそこで出会ったゴリラを夫婦になった。
しかし、その夫ゴリラは人間の子供を助けるために射殺されてしまった。
人間を助けるためにゴリラを殺すことは正義なのだろうか。
それを決めるのは人間でしかないーー
ローズは夫のため、自分ために人間相手に裁判を起こすーー
正義とはなんなのか。人権とはなんなのか。
ゴリラのローズ
物語の主人公であるゴリラのローズは、小さい頃から高い知能を持ち、ジャングルで研究を受けていました。
言語能力や記憶力、数学の知識までも持ち研究者を驚かせるほどの高い知能を持っていました。
元々ローズの母親も高い知能を持っており、その母親から生まれたローズは大きな期待をされて生まれてきたのです。
ローズは母親から言語や手話を教わり、どんどん成長していったのです。
ジャングルでの生活
そんなローズはカメルーンのジャングルで生まれました。
ゴリラの群れの中で育ったローズはゴリラとしての生活をしながら、研究所で人間とたくさんのコミュニケーションを取って成長していきました。
そんな中でローズは母親よりも人間に対して大きな興味を持っており、テレビドラマや映画を見て人間の生活をどんどんと知っていきました。
そんなある日、ローズの元にアメリカの上院議員が訪ねてきました。
ローズのアメリカ移住
ローズは言語を完璧に理解し、手話を使って会話もできるゴリラということで、アメリカの上院議員がローズの元に訪ねてました。
この出会いをきっかけにローズはアメリカの動物園に移住することになったのです。
アメリカ今までジャングルの研究所で出会った人以外にたくさんの人間と出会います。
人間の友達もできるくらい様々な人間との出会いが待っていたんです!
動物園の中で一際注目を集めていたローズは、ゴリラとしての生活も続け、動物園で一人のゴリラと出会い夫婦の関係になったのです
しかし、不運は突然訪れますーーー
夫ゴリラの射殺
ある日、動物園のゴリラパークの中に4歳の男の子が落ちてしまったのです。
子供が落ちたことで園内は大騒ぎ、その騒ぎでローズの夫ゴリラは興奮していましい、落ちた男の子の足をつかみひきづり回していまいました。
騒ぎを聞きつけた園内のスタッフはその男の子を助けるために、麻酔銃ではなく実弾でローズの夫を射殺したのです
動物園側は男の子を助けるためには仕方なかったとしているが、ローズは最愛の夫を殺された被害者
ローズはこの事件で人間に対して、裁判を起こすのです
ゴリラ対人間
裁判の第一審はローズの敗訴に終わりました。
人間としては子供を助けるために動物の命を犠牲にするのは仕方がないという判決
結局ゴリラであるローズの訴えはゴリラは人間ではなく、動物であるからという理由で通らなかったのです。
ローズは悲しみに押しつぶされ、報道陣の前でこう発言します
『何も考えていない。私は諦めた。正義は人間に支配されている。裁判は動物に不公平だ。』と
その後ローズは動物園を離れ、別の道を歩むことになります。
そんな時ある弁護士に出会い、再度ゴリラとして人間相手に裁判を挑むことになるのです。
ゴリラ対人間の結末
第二審でも最初はゴリラはあくまでも動物であるから、人間の命が優先されることは当然であるという流れが濃厚でした。
しかし、その裁判は新たな弁護士によって大どんでん返しが行われるのです。
ローズは確かにゴリラである。そしてゴリラは動物である。
ではそもそも動物と人間の違いはなんなのだろうかーーー
人間とは一体なんのかを考えさせられる結末です
興味がある方はぜひ最後まで読んでみてください!
やっぱりメフィスト賞は奇抜で面白い!!
感想 考察
物語は、ジャングルでのローズの獣としての生活と、アメリカでに人間のような生活の二つが描かれます。
それぞれ動物界での過酷さと、人間界での過酷さが印象に残る作品でした
動物界での過酷さ
ローズはカメルーンのジャングルで生まれました。
言語を話せるゴリラとして研究所に出入りしながらも、ゴリラとして野生の生活もしていました。
そこでは2匹のオスゴリラに群れが襲われ、ローズの群れの子供が殺されるシーンがあります。
このシーンがすごく印象的で、子供を殺された母親は子供を殺されたことに対して悲しみを抱いていないように描かれているんです
しかし、ローズはその子供が殺されたことに深い悲しみを受け、自分の感覚に違和感を覚えるんです
ローズは人間のことを知っていくうちに、段々と考え方が人間寄りになっていたんです
この動物と人間の違いがはっきりと描かれたのが衝撃的でした
人間界での過酷さ
ローズはアメリカに行き、いろんな人間との出会いの中で段々と考え方が人間に近いものになっていきます。
服を着たり、愛するものに対する嫉妬を覚えたりしていきます。
しかし、あくまでもローズはゴリラ
それが最初の裁判でローズに大きな悲しみを与えます。
そこからの第二審
このシーンがこの作品で伝えたかったことの全てが詰まっています。
人間と動物の違いはなんのか
本作では、その違いを「種全体として複雑な言語体系を持つか否かによる」と定義されています
では、人間の言葉を理解し手話で会話ができるローズは人間なのでしょうか。動物なのでしょうか。
あなたはどう思いますか??
とにかくインパクトの大きい作品でした。
実話がモチーフになっている
実は『ゴリラ裁判の日』はアメリカで実際に起きた事件がモチーフになっています。
その事件は『ハランべ事件』と言われ、アメリカの動物園にいたハランべというゴリラが射殺された事件です。
事件は本作と同様、動物園の檻の中に小さな子供が入り込んでしまい、それを見たハランべがその子供を引きずりまわしてしまいます
それを危険と判断した動物園職員が実弾でハランべを射殺したのです。
この事件によって子供の母親が叩かれたり、ハランべを殺すことはなかったんじゃないという署名が多く寄せられました。
本作のようにゴリラが裁判を起こすことはなかったですが、アメリカで大きな影響があった事件なのです。
まとめ
今回は須藤古都離さんのデビュー作『ゴリラ裁判の日』を紹介しました。
メフィスト賞はやっぱり裏切らないと思わせてくれるインパクトの大きい作品でした!
みなさんも興味があればぜひ読んでみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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